いかに歯を削らず、長く機能させるか
担当医:柿内 裕輔
当院では、「できる限り天然の歯を残すこと」を最も大切にした保存治療、いわゆるMI(Minimal Intervention)治療をメインに行っております。これは、むし歯や破折などのトラブルに対して、必要最小限の処置で対応し、健康な歯質を最大限温存するという考え方に基づいた治療です。
一般的な治療では、再発リスクの回避や処置のしやすさから、ある程度広く歯を削るケースも少なくありません。しかしMI治療では、マイクロスコープによる拡大視野や精密な接着技術を駆使することで、問題のある部分のみを的確に除去し、可能な限り歯を削らずに治療を行います。
近年では「バイオミメティックデンティストリー」と呼ばれる、歯の構造や機能を模倣する治療が先進的な考え方として注目されています。当院ではさらにその一歩先を見据え、「Beyond the Biomimetics」というコンセプトのもと、単に天然歯を再現するだけでなく、それ以上の強度と耐久性を目指した治療を行っています。高度な接着技術と材料選択により、天然歯を超えるパフォーマンスを発揮する修復を追求しています。
私は大学院にて保存修復学を専攻し、「いかに歯を削らず、長く機能させるか」というテーマで研鑽を積んできました。その経験から、単に治療を行うのではなく、患者さん一人ひとりと相談しながら、「本当に歯を残すために最適な方法は何か」を共に考えることを大切にしています。
天然の歯は一度削ると元に戻ることはありません。だからこそ、将来を見据えた選択が重要になります。このような治療を通じて、患者さんがご自身の歯で長く噛み、食事を楽しみ、自然な笑顔で過ごせる未来を支えたいと考えています。
歯の保存へのこだわり
私が歯の保存にこだわるようになった背景には、大きく二つの理由があります。
一つは、東京医科歯科大学(現・東京科学大学)大学院にて、保存修復学分野で研鑽を積んだ経験です。田上順次教授のもとで、天然歯の価値や接着修復の可能性について学び、「歯はできる限り残すべきもの」という考え方を強く持つようになりました。その後、アメリカ・ペンシルバニア大学にてマーカス・ブラッツ教授のもとでさらに知識を深め、世界的に見ても高いレベルにある接着治療を日本でも広めたいと考えるようになりました。
もう一つは、自分自身が患者になった経験です。2024年に自転車事故で前歯を大きく損傷し、神経の治療が必要な状態となりました。その際、「絶対に自分の歯を抜きたくない」という強い思いが自然と湧き上がり、改めて患者さんの気持ちを実感しました。最終的にはダイレクトボンディングによって歯を残すことができ、現在は元の状態以上に回復しています。
この経験を通じて、「歯を残したい」という患者さんの想いに深く共感できるようになりました。だからこそ、単なる治療ではなく、その方にとって本当に価値のある選択を一緒に考えていきたいと思っています。
自由診療についての考え方
私自身、以前は保険診療を中心に治療を行っていました。しかし、国内外の勉強会や研修に参加し、最新の治療技術や考え方に触れる中で、それらの多くが保険診療の枠組みでは十分に提供できない現実に気づきました。
保険診療は、必要最低限の治療を一定の水準で誰もが受けられる素晴らしい制度です。一方で、使用できる材料や治療方法、時間的な制約があるため、すべての患者さんにとって最善の治療を提供できるとは限りません。より精密で再発リスクを抑えた治療や、歯の寿命を最大限に延ばすためのアプローチは、どうしても保険の枠を超えてしまうことがあります。
私はこれまで、多くの時間と費用をかけて研鑽を積み、より良い治療を追求してきました。その技術や知識を活かし、「本当に歯を大切にしたい」「できる限り長く自分の歯を守りたい」と考える患者さんに対して、最適な選択肢を提供したいと考えています。
自由診療は単に高額な治療ではなく、患者さん一人ひとりに合わせて、時間や技術、材料を十分にかけることができる医療の形です。私はその中で、目の前の患者さんにとって何が最善かを常に考え、納得して治療を受けていただけるよう心がけています。

